この記憶も、この感情も、この身体も、全部私のもの。

私は、私以外の何者でもない。

誰かの代わりなんかじゃない。

いつもそう信じていたかったの。

ふとした時に頭を掠った不安を否定して、自らの身を護りつづけた。

――――――私は私の為に存在しているのだと。



「私は・・・・・・っ!」



譲れない。

たとえ世界が滅んでしまうとしても、世界を滅ぼそうとしても、
これだけは譲るわけにはいかなかった。



「私は、なんて技術を誕生させてしまったんでしょうね」



対峙した男が言う。

かつては仲間だと、そう言った仲間が言う。

私が最も愛した、最愛の人が言う。

その表情は見たことも無いくらいに無表情。

ああ、その表情は軽蔑か、―――見限りかな。

その男―――ジェイド・カーティスは無表情のままで言う。



彼の肩から流れる血は紛れも無く紅色。

彼の美しい瞳と同じ、紅色。

私が傷をつけ、血を流させた。

手に残る、人肉を斬る感触。

ああ、私がやったんだ。



「――――――、死にますか? 私の手で」

「それは、とっても素敵なお誘いよ、ジェイド」



愛しい人の名を呼ぶ。

これまでで一番の愛を込めて、憎しみを込めて、悲しみを込めて。

彼の手で死ねるのなら本望だわだなんてことは言わない、思わない。



だって、死にたくないもの。

ここにいたい。

ここに存在して、みんなと何気ない毎日を過ごしたい。

平和は長くは続かないかもしれない。

それでも、少しでも長く存在していたいと、何かに願ったの。



「手加減なんていらないわ。私は貴方を殺すつもりだもの」



私の願いは成就しない。

することはないと知っていたの。

道は、もう随分と昔に違えてしまった・・・・・・。

後戻りは、できない。



「仕方ありませんね」



眇められた目は紅く、この世で一番美しいものに見えた。








死をもって、この愛を貴方に告げよう




(2006/02/12)