「そんなに急がれて、どうかなさりましたか、殿下」
「あら、カーティス大佐ではありませんか! 実は兄様のジェイドを探していたのです」
「・・・・・・私、ですか?」
「いいえ、ブウサギですわ。見掛けませんでしたか?」
宮殿内を急ぐ小柄な姿を見つけ、声をかけた。
彼女が可愛らしく、くるりと振り向くとシンプルなドレスの裾が揺れた。
「すみません、見掛けていませんね」
「そう、仕方がありませんわ」
どうやら姫は兄であるピオニー陛下のペット、ブウサギジェイドを探しているようだった。
「しかし、殿下。護衛も付けずに出歩かれるのは感心できませんねぇ」
「すみません、カーティス大佐」
「まったく、ガイは何をしているんだか」
「あー、彼は女性恐怖症なので私の護衛は酷だと思い・・・・・・」
つい黙って一人で出てきてしまったのです
後から続いてくる言葉はしゅんとしていて小さかった。
まるで親に怒られた小さな子供のようだ。
「仕方がありませんね。殿下、私と一緒に探しましょう」
「本当ですか! ありがとうございます、カーティス大佐」
このまま彼女を一人にしておくのも危険だ。
一国の姫だ、善からぬことを企む輩がいても可笑しくない。
それにこの愛らしさだ。
もし姫に何かあったら、あのシスコン陛下のことだ、ただでは済まされないだろう。
「そういえば殿下、陛下はどうなさったんです?」
「兄様はサフィールを探していらっしゃいますわ」
「まさか、護衛なしで、ですか?」
「・・・・・・多分」
「兄妹揃って、貴女達という人達は・・・・・・」
そう言うと姫は再びしょんぼりとした。
「フリングス少将」
丁度通りすがったフリングスに声をかけると、彼は足を止めてこちらを向いた。
「カーティス大佐! 如何なさいましたか?」
「陛下が一人でブウサギを探していらっしゃるようです。見つけ次第、護衛してください」
「わかりました」
小走りで駆けていく彼の足音が消えてしまうと、だれも通らなくなった。
「さ、探しましょうか」
「ええ、そうですね」
隣にいる彼女が歩くたびに、彼女のポニーテールが楽し気に揺れるのが見えた。
それを見ながら彼女が隣にいるという、小さな優越感に浸った。
「まあジェイド、貴方、図書館にいたのね」
「まったく、どうやって入ったんでしょうね」
宮殿中を探し回り、ようやく見つかったブウサギは眠っていた。
今、ブウサギのジェイドは姫の柔らかそうな腕の中でスヤスヤと寝息を立てている。
なんと羨ましい。
「ありがとう、カーティス大佐」
「いえいえ」
心底嬉しそうに姫に言われる。
純真無垢とは彼女の為にある言葉だろう。
しかし、その純真無垢に対し、ふと良いことを思い付いてしまったので言ってみた。
「ですが、一つお願いがあります」
「何ですか?」
小首を傾げる。
小動物を思わせるその仕草は保護欲を掻き立てられる。
いつだって自分の目の届く所にいて欲しいと願ってしまう。
「ホッペにちゅーか、私のことをこれから名前で呼ぶか、どちらかお願いします」
「ええっ?!」
予想していた通り、彼女はおたおたした。
そんな様子を見て、喉をクツクツ鳴らす。
我ながら、なかなかいい性格をしていると思った。
「どちらになさいますか?」
結局、彼女はしばらく考えた末、
「ジ、ジェイド・・・・・・?」
ほんのりと頬を赤く染め、名前を呼んでくれた。
本当はホッペにちゅーの方が良かったのだが、仕方ないだろう。
今は名前を呼んでくれたという事実で十分満足だった。
「何ですか? 殿下」
とりあえずホッペにちゅーしてくれるまで、頑張ってみようと思った。
縮まるはずのない距離を縮めたくて、超えられないはずの壁を超えたくて
姫、ピオニー9世陛下の妹、宮殿のアイドル(笑)
まあ、大佐は相手が姫だろうとなんだろうと、身分の差なんてそのうち越えちゃいそうな気がしなくも無いんですが、やっぱりそれは難しいんじゃないだろうかってことで。
文章ぐだぐだだな、オイ。
(2006/02/27)