「、トクナガ直して」

「いいわよ」



アニスに言われてトクナガを受け取ると、
隣で私の腰をちゃっかり抱き寄せていたジェイドが不満そうにする。

何だかムカついたのでその手をつねってやった。



「・・・・・・その人形はディストが作ったものでは?」

「私も少し手伝ったのよ」



見るとトクナガは所々破れそうになっていたりしていた。

ふとトクナガを巨大化させるのに苦労したという記憶が蘇る。

アニスは随分と気に入ってくれているようなので、
その苦労は報われた。

いつも持ち歩いてくれているので嬉しい。



「これ作るの大変だったんだよねー。
 譜業の知識だけじゃなくって、譜術なんかも必要だったもの」

「そうそう、トクナガ作ってくれてるときのってば、
毎日目の下に隈ができてたもん」

「うっそー! 気がつかなかったよ」



言われてみれば、毎日夜遅くまでサフィールの研究室にいたものだ。

二人であーでもない、こーでもないと考えたりもした。

なんだか随分昔のことのようだ。



「一時期、教団内でディストとが付き合ってるって噂が流れたんだよー?」

「・・・・・・はい?」

「・・・・・・ほう」



思考が停止した。



「・・・・・・何それ」

「少し、興味がありますね」



ジェイドの顔に薄ら笑いが浮かんでいるのがはっきりと分かった。

本能が危険!危険!と脳を揺さ振る。

アニス、私の可愛い妹分。

君は一体何てことを言ってくれたの!?



「ちょっと待って、なんで?! ありえないよっ!」

「ほら、は毎日ディストの研究所に行ってたじゃない?
 しかも夜遅くまでは部屋に帰ってこないし、
 目の下に隈はできてるし、ディストは嬉しそうだったし」

「そうですか。ディストと一緒に夜遅くまで・・・・・・ねぇ?」

「たまに朝方帰ってきたしね」

「・・・・・・ひぃ・・・・・・っ!」



今この場で気を失えればどんなに幸せだっただろうか。

アニスは火に油を注ぐし、ジェイドは目が笑っていない。

彼はもはや声だけで笑っている。

この後に起こるだろうことが恐ろしかった。



「ア、アニスちゃーん? 嘘だよね? そんな噂流れてないよね?」

「え? 多分イオン様もヴァン総長なんかも知ってると思うよ」

「・・・・・・終わった、私の人生もう終わった」

「嫌ですねぇ、そんなに悲観しないでくださいよ。
 これから良い事が起こりますよ?」

「アニスぅーー!!」



先ほどからまったく変わらぬ薄ら笑いを浮かべ、
先程よりがっしりと腰を抱き寄せるジェイドから逃れようとアニスに手を伸ばす。

しかし、期待は粉々のボロボロに打ち砕かれた。



「それじゃ、お二人ともお楽しみくださいねー」

「ありがとうございます」

「うっそ・・・・・・っ!」



バタンと無情にも閉められた扉を見詰めながら、
私は深い溜息をついた。



「さぁ、楽しみますよー?」

「・・・・・・勘弁してください・・・・・・」



神様はそんなにも私が嫌いかと、
今度はジェイドの顔を見ながら溜息をついた。








今更過去を後悔したって、もう手遅れ



アビスのマスコットその2、トクナガ。
ちなみにその1はミュウです、恐らく。
実はこの話のさんは雪国幼馴染で、オラクルの人間です。
設定がまったく生かされていませんが。



(2006/02/28)