「どうして私なんです?」


「私の趣味ですよ」


「・・・・・・あの、本気なんでしょうか?」



 涼しい顔をして食事をする目の前の男、ジェイド・カーティスはどうも変な人らしかった。



「そんな不審者を見るような目で見ないで下さい」


「だって、あまりにも疑わしいことを仰るんですもの・・・・・・」


「信用ないですねぇ」


「うう、すみません」



 自分がこの場に不相応に思えて仕方がない。

 なぜ自分はこんな所―――タルタロスにいるのだろう。

 周りは軍人ばかりではないか。



「大佐さん、私、帰りたいのですが・・・・・・」


「無理ですね」


「な、なんでですか?!」


「先ほど説明したように、今回の作戦は極秘扱いなんです。
 貴女を帰して機密が洩れてしまっては困るんで♥」



 騙された!

 確かに私は今回のジェイドの作戦とやらを聞いた。

 ローレライ教団最高指導者・導師イオン様を、
 敵国・キムラスカへ平和の使者として送り届けることが今回の作戦だと。

 けれども今私がこの場にいるのは、
 昨日彼が半ば強引に取り付けた食事のためであって、作戦に同行するためでは無い。

 むしろ、きちんと断ろうと思って、今日来たつもりだったのだ。

 それなのに、既にこの艦はキムラスカの首都・バチカルに向かっていると言う。

 しかも、機密漏洩防止の為に降りられないとも言われた。

 これでは騙されたと思っても仕方がないではないか。



「酷いですよ・・・・・・。断るつもりで来たのに・・・・・・」


「すみません。断られないようにこうさせて頂きました♥
 マスターさんに話はつけてあります」


「・・・・・・」



 食事に誘われて、まんまと来てしまった私がいけなかったのだ。

 きっとそうに違いない。

 そう自身に言い聞かせて引き受けるしかないのだろう。

 この人に逆らっては、きっと、もっと恐ろしいことが起こるのかもしれない。



「ですから、どうして私なんですか? 私程度の腕などいくらでもいらっしゃいます!」


「まあ、理由は色々とありますよ? 先ほど言ったように私の趣味もありますし」


「・・・・・・どんな趣味ですか、それは。どうかと思いますよ・・・・・・?」



 ずっとこんな調子だ。

 疑問は解消されぬまま、平行線でしかない。

 一体、この人は私に何を要求しているのだろう。



「作戦にご協力願えますか?」


「・・・・・・協力するしかないじゃないですか・・・・・・」


「よかったよかった。それなら理由をお話します」



 帰れないのだ、帰ろうにも。

 外には魔物がわんさかといるし、道も分からない。

 そもそもタルタロスから降ろしてももらえ無そうだ。



「まず第一にが第七音素譜術士であるとういうことですね」


「でも、私は回復程度しかできませんよ? お役に立てるかどうか・・・・・・」


「民間人で、回復係が欲しかったんですよ。
 さすがに大詠師派も民間人を傷つける事はないはずだ」


「つまり、保険ってことですか? いざって時の」


「ええ、そのとおりです。貴女さえ無事でいれば逆転のチャンスが残るでしょう?」



 それは、とても重要な役目では?

 私なんかがやってもいいものだろうか。



「でも、それなら軍人さんを民間人に扮装させればいいんじゃないでしょうか?」


「いえ、それなりの回復譜術が使える軍人は大詠師派からのチェックが入るはずです。
 限度がありますね」


「そう・・・・・・。私なんかがやっても平気なんでしょうか?
 力不足じゃありませんか?」


「問題ないでしょう。、貴女のことを少し調べさせて頂きました。
 貴女の通っている国立大学院での成績です」



 手渡された資料に絶句した。

 そこまで調べてあるのかと。

 もっといい加減な決め方なのかと思っていた。



「回復譜術系は常にトップですね?
 それにオールドラント史や譜業にも長けている。最近の論文も高評価を得ている」


「・・・・・・確かに私の専攻は創世暦時代についてです。その延長で譜業知識もあります」


「となると、回復譜術は資質ですか」


「ええ、多分そうだと思います」



 顔を知らない、父さんと母さんから受け継いだもの。

 両親から残された、ただ一つのものだ。



「学校を出たらマルクト軍に来て欲しいものですねぇ」


「・・・・・・私は学者になるつもりはありません。私はあのお店を継ぎたいんです」


「ふむ、なぜです? それだけの成績を残しておいて」


「私を育ててくれたのはマスターさんですから。あの人の為に生きたいんです。
 歴史は好きだけど・・・・・・」



 いつの間にかに私もジェイドも食事を終えていた。

 私は気が付かないうちに自分の手を固く握り締めていた。

 ・・・・・・私、一体なにこんな話をしてしまっているんだろう。



「では、今日から私の為に生きてください」


「えぇっ?!」


「そんなに喜ばないで下さいよ?」


「違いますっ!」


「とにかく、しばらくは私達に同行してくださいね。美味しい食事、楽しみにしています」


「ああ、もう、話を聞いてくださいっ!!」


の部屋に案内しましょう」


「え、ちょ、ちょっと、大佐さん?! お姫様抱っこは止めてくださいっ!」


「ははははは、は軽いですねぇ」


「降ろしてーっ!」



 前途多難です、マスターさん。

 ・・・・・・私、どうなるんでしょうか?








前も後ろも逃げ道はありません



あんまりにも内容が薄かった中途半端だったので、急遽追加。
後編アップしてから中編ってどうよ?とか思いましたが、気にしちゃいけません☆
私が楽しけりゃそれで問題ナッシング!(うわ)
はーっはっはっはっ! やけっぱちだぜ、イェィv



(2006/02/17)