「いらっしゃったぞっ、大尉だ!」


「は?」



 部下達の訓練をつけてやり、一休みしていたところだった。

 突然名前を呼ばれ、何事かと振り返ってみれば三人の兵がこちらに向かって走ってきた。



「な、何事?」



 兵達は何やら必死な様子でこちらへ向かってくる。

 私は訳がわからなくて後退った。



「お願いです、逃げないでくださいっ!」


「誰か、大尉を捕まえてくれっ!!」


「え、ええ?!」



 本当に何事なのだろうか。

 捕まるようなことをした覚えも全く無い。

 部下達も驚いている。



「つ、捕まえるんですか?」


「ああ! カーティス大佐のご命令だっ!」


「なんでジェイド・・・・・・。どっちにしろ逃げた方がいいわねっ」



 ジェイドの命令となると、捕まると少々面倒なことになりそうだ。

 あの人はそういう人だ。

 絶対、捕まってはいけないと体中の警報が最大級で駆け巡る。



「ああっ!! お逃げになられたぞっ、追え!」


「・・・・・・!!」



 捕まってたまるか!

 捕まったら最後、ジェイドの前に連行されるのだ。

 きっととんでもないことが待ち受けているに違いない。



「よし、あそこで・・・・・・!」


「あっちの方へ行かれたぞ!」



 曲がり角を曲がり、そのまま逃げずに兵を待ち受ける。

 三人くらいならなんとかなるだろう。



「!!」


「なっ!」


「どうしたん・・・・・・うわっ!!」



 最初の二人の首の後ろに手刀を入れ、少し遅れて曲がってきた最後の一人の腹に一発お見まいしてやる。

 油断していたのか、三人ともあっけなく気を失ってしまった。

 そんなに力を入れたつもりはなかったのだが。



「あらら。こんな人が軍にいていいものかしら・・・・・・って、この人達、陛下の護衛部隊じゃないの」



 しかも服装からして一番下っ端だと思われる。

 なぜ彼らが軍の基地にいるのだろう。

 彼らの部隊は宮殿の離れに基地があるはずだ。

 おかしい、妙だ。

 そもそも護衛部隊は陛下付きであるから、命令は大抵陛下からだ。

 なのになぜ彼らはジェイドの命令で動いているのだろう・・・・・・。



「まさか、陛下もグルなんじゃ・・・・・・」



 考え込むには場所が悪い。

 とりあえず、安全な場所を確保しなければ。



「ねぇ、なんで私は追われているのかな?」


「・・・・・・う、うっ・・・・・・」


「駄目だ、意識が戻ってないわね」



 理由を知るのに手っ取り早いのは、この兵達に話を聞くことなのだが、それも無理そうだった。



「仕方ないわね。とにかく逃げよっと」



 大騒ぎになる前に逃げよう。






***






「い、一体、何なのよ・・・・・・」



 ゼイゼイと肩で息をする。

 さすがに私も軍人と言えども大人数を相手に逃げたり戦ったりすれば疲れるに決まっている。

 しかももうかれこれ三時間はこうしている。

 いい加減疲れた。

 だが、隠れようにも今や相手は陛下護衛部隊の半分以上だ。

 すぐに見つかってしまう。

 それに実際、一人一人は下っ端なので弱いのだが、数が数だ。

 一対大勢は無理があった。



「もう、どうすりゃいいのよ・・・・・・」


「逃げるのをお止めになればいいのですよ、大尉」


「フリングス少将・・・・・・。ついに貴方も登場ですか」


「私が協力を要請したんですよ」


「・・・・・・マルコ、あんた私を裏切ったわね!」


「私も自分の身が可愛いんです。大人しく捕まってください!」



 なんてことだろう。

 フリングス少将を呼んだのは同じジェイドの副官であるマルコらしい。

 一時間ほど前に同じ副官であるということで見逃してやったマルコが、だ。

 彼も陛下護衛部隊と共に駆り出された人物なのだろう。

 だが、フリングス少将を引き連れて戻ってくるとは思いもしなかった。



「嫌! 絶対嫌!」


「なぜです?」


「マルコが私を裏切るほどのことが待ってるんでしょっ?!」


「・・・・・・否定はしません」



 マルコが目を逸らす。

 やっぱり、酷いことが待ってるんだ!

 嘘でもなんでもつけばいいものの、そうしないということは余程のことが・・・・・・。



「マルコはまだしも、フリングス少将! 貴方は関係ないでしょう?」


「いえ、それが・・・・・・」


「・・・・・・すでにみんな敵になったのね」


「ええ、そんな感じでしょうか」


「・・・・・・」



どうしようどうしようどうしよう。



「ああーもうっ!! 嫌っ!!」


「何をするつもりです?」


「秘奥義」


「ええっ?!」


「そ、そんなことをすれば基地が崩壊しますよっ!」


「命には代えられないの。二人も諦めて頂戴」



 もういっそのことどうにでもなれ!



「くっ、仕方あるまい! マルコ、譜術封印を!」


「はい!」


「あ、ちょっと! 酷い!」



 譜術封印をかけられ、一時的に音素が動きを止められてしまう。

 私に集まりかけていた音素がすべて止まってしまい、そのまま元通りに拡散してしまった。

 必然的に秘奥義は発動しなくなってしまった。



「マルコめっ!」


「すみません、大尉」


「次は封印術の発動が待ってますよ」


「げ、許可出てるの?!」


「ええ、さすがに通常のものよりも簡単なものですが。まあ半日は解除できないでしょうね」



 打つ手無し、大人しく捕まるしかなかった。

 フリングス少将はとにかく優秀な策士である。

 だからマルコは連れてきたのだ、私の苦手な彼を。

 どうせ私は自他共に認める猪突猛進女よ!








 いい加減諦めなさいって


 アンケート1位の設定
 『マルクト軍人』



 ふと頭に降臨したアホネタ。
 やっぱり一話じゃ終わりませんでした(笑)
 後編はありがちなネタですよ、奥さん。
 ってか、前編、大佐出てないなー。(おいおい)



(2006/03/22)