ぼすっという妙な音で目が覚めた。 どうやら枕を上から私に落としてくれたらしかった。 痛くはないが、息苦しい。 「あ、ジェイドだ。やっと来た」 「お、ジェイド。結構遅かったな」 ベットからジェイドを見上げると、彼は不機嫌だった。 人の気配に陛下も起きたようだった。 「貴方達二人はそこで何をしているんです?」 「何をって昼寝。今日は夜勤あるから」 「俺はお前から隠れてたんだよ。ついでに昼寝」 「……まったく。陛下、ガイが血眼で貴方を探していますよ。そろそろこちらに来るのでは?」 すぐに可哀想なガイの様子が想像できた。 飼い主のいない寂しさからぶーぶー鳴くブウサギ七匹を連れながら、広い宮殿内をさ迷い歩くその姿が。 まさか隣にある軍の本部にいるとは夢にも思わずに頑張っているのだろう。 ちなみについ最近ブウサギは一匹増えた。 と名付けられた、勝手に。 「あーあ、ガイが可哀想。陛下、帰ってさしあげては? 私はもうちょっと眠りますから」 「えー。俺はまだと寝ていたい」 「……それじゃあ私も寝ましょうか」 「え、ちょっとジェイド! いくらなんでもベットが狭いって!」 「そうだぞジェイド、俺とのラブラブタイムを邪魔すんな」 「いつ私が貴方とラブラブになったんですか!」 「ほぉ、ラブラブ、ですか」 「ジェイドはうつ向いて眼鏡を元の位置に戻さない! 怖いから!」 そんなことを言い合っている内に、ジェイドが私の隣に潜り込んできた。 狭いベットなのでお互いの体が密着する。 はっきり言って困る。 「ぎゃっ、どこ触ってんのよ!」 「偶然ですね」 「両手で? 右手は腰で左手は胸でだよ?!」 「そうだぞ、ジェイド。偶然を装うなよ」 「とか言いながら陛下もどこ触ってんですか!」 「偶然だな」 「ご自分は棚上げですか?!」 ぎゃーぎゃー言っている―――言っていたのはもっぱら私だが―――と、誰かが部屋の前に来たらしく、控え目なノック音がした。 その音はできればここに誰もいませんように、と願っているようだった。 何とも哀れな。 ゆっくりとドアが開いたような音がしたが、私はそれどころじゃなかった。 「陛下! 俺が一体どれだけ探したことか! ってうわ!」 私が振り回していた枕が手からすっぽ抜け、扉の前に立っていた彼に当たった。 クリティカルヒットを叩き出した模様。 「「「あ、ガイ(ラルディア)」」」 「毎度毎度申し訳ないんだけど、助けてガイ!」 「、またか……」 力無くガイが言う。 無理もない。 前回は大抵の枕がルークに当たったが、残念なことに今回は壁になるルークはいない。 しかも相手は主君と(いろんな意味で)怖い人。 勢いなどあるわけがない。 だが、ここでガイが頑張ってくれなくては私が危険なのだ。 「用がないなら出ていってください、ブウサギ連れて」 「ああ、まったくだ。邪魔するなよ」 「あっ、こらガイ! 何もなかったかのような顔して出ていかな、ってああもう! 触らないで、つーか揉まないで! やだぁっ!」 「あ、あんた何してんですか、陛下! つーかジェイドも!」 「ガイ、これはな、スキンシップだ」 「ええそうです。スキンシップです」 「んなスキンシップがあってたまるものですか! ガイ、とにかく止めなさい!」 「どうやってだよ・・・・・・。おっさんみたいな言い分けしてる人に俺は勝てない」 「何でもいいわよ! なんか投げるとかあるでしょう?!」 「・・・・・・ああ、そうか」 納得したように、ガイが側にいるブウサギを掴んで……そのままブン投げた。 ブウサギは空中でミュウばりに回転しながら、当然かのように飼い主にぶつかった。 ブギーと抗議のような悲鳴が聞こえた。 確かに、なにか投げてくれとは言ったが、まさかブウサギを投げるとは。 「ばかー、ブウサギは駄目。 もしそれがネフリーとかネビリムとかとかアスランだったらどうすんのよ!」 「ガイラルディア、お前! サフィール投げんなよ!」 「ならよし! よくやったわガイ」 「ひっで、。サフィール可哀想だろ?」 「あと、ルークとジェイドも投げてよし! っていうか、ブウサギじゃジェイドは止まりません!」 「嫌ですねー、人聞きの悪い」 「体触りながら言うなー!」 ブウサギは陛下を止める事はできるが、ジェイドにはなんら影響力を与えない。 むしろ陛下が気を取られている内に、いつの間にか抱きしめられちゃったりしている。 これはまずい。 なんとかしなくては・・・・・・っ! 「あ、ガイ、枕投げて枕! この間みたいにジェイドに! そこにあるでしょう?!」 「よし、わかった!!」 ガイが足元にあった枕をジェイドに投げる。 今ならジェイドは向かってくる枕に気を取らているはず。 私の至近距離からぶつける枕からは逃れられるわけがない。 一瞬でも隙ができればこのベットから(というよりジェイドから)抜け出せる! しかし、今回のジェイドは一味違っていた。 「二度も同じ手に引っかかる死霊使いではありませんよ?」 「え?」 ガイからの枕は譜防壁を使って、私には枕を投げさせなかった。 ジェイドにうつ伏せにさせられ、さらにその上に馬乗りになられたからだ。 これで完璧に身動きできなくなった。 「離せー! 降りてよー!」 「嫌です」 見えないが、きっとにっこりしているのだろう。 声が何となく嬉しそうだ。 ・・・・・・どうしよう。 「なあジェイド」 「なんです、陛下」 「俺、防壁内にいるんだけど」 「ええ、知ってます。それが何か?」 「・・・・・・もういいや。なんか馬鹿らしくなってきた」 「それはそれは」 ぎしりとベットが揺れる。 何が起こっているのか私には見えない。 「おい、ガイラルディア。宮殿に帰るぞ」 「え、ああ。はい」 陛下たち帰るんだー・・・・・・。 ってそれは困るではないか! 「ええっ?! ちょっと待ってください、陛下! あとガイも!」 「じぁな、。また一緒に寝ようなー」 「行かないでー! 今この人と二人きりになることがどんなに危険かっ!」 「頑張れよ」 「何を、どうやってよ、ガイー!」 バタンとドアは無情にも閉まり、二人が出て行ったのだという絶望を実感させた。 「ふむ、この体制からというのも悪くありませんねぇ」 「勘弁してください」 「一応私にも嫉妬という感情はあるんですが。ちなみに、嫉妬深いですよー?」 「・・・・・・嘘だぁ」 「まあまだ夕刻前です、存分に楽しめますね」 「嫌ーー!!」 やはりジェイドの声は上機嫌で、嬉しそうだった。 起爆スィッチが実は自爆用スィッチだったことを思い知った瞬間 毎度毎度のことですが、思ったよりジェイドがやらしくなりません。 もうちょっと黒いジェイドをそのうちお届けできればと思います。 陛下いっぱい書けて嬉しかったです。(趣旨違いますよ、雪架さん) (2006/04/06) |