| 「・・・・・・私が一体何をしたって言うんですか」 鏡に映った自分を見て、は深く溜息をついた。 現実には到底ありえないようなことが起こっていたのだ。 「どうしろと・・・・・・」 程よく筋肉のついた、長い腕と脚。 大抵の人間を見下ろせるほどの高身長。 低いけれども優しげな声。 極めつけは、オレンジの短い髪。 鏡に映った彼女は間違いなく、ガイラルディア・ガラン・ガルディオスの姿をしていた。 「よりによって、男のガイですか」 小説などでは日常茶飯事だと思われる出来事が、まさか自身の身に起こるとは。 たしかこの類のセオリーは、自分がなった相手も同様のことが起こっている、というものだ。 そう考えると、同性だったらまだよかっただろうにと思う。 だが同時に、ジェイドで無いだけ、本当によかったとも思う。 もしも私がジェイドと入れ替わりなどしようものなら、私は嫁には行けなくなってしまうに違いない。 ・・・・・・想像しただけで恐ろしい。 だから、男とはいえ、相手がガイだったことはせめてもの幸いだ。 ガイならば常識的な行動を取ってくれるだろう。 そうだ、そうに違いない。 「とにかく、ガイの様子を見に行きましょうか」 ♪ 「・・・・・・」 ガイラルディア・ガラン・ガルディオス―――ただし、今の姿は・―――は疲れ果てていた。 「一体、何が起こったんだ・・・・・・」 朝目が覚めると、なぜかジェイド・カーティスがさも当たり前かのように隣にいた。 そして唇を奪われそうになった。 とにかくもう、ガイは驚いた。 驚くしかなかった。 だからとっさに奥の部屋に逃げ込んだ。 それしか思いつかなかった。 「おい、嘘だろう・・・・・・?」 その部屋にあった鏡を見ると、まさかとは思ったが、同僚である女性の姿で自分が映った。 というか、とジェイドはいつも一緒に寝ているのだろうか。 ・・・・・・知ってはいけないものを知ってしまった気がする。 「女、だな」 自他共に認める女性恐怖症なのだが、どうやら自分が女性になるのは平気らしい。 普段感じる恐怖なんかがまったく感じられない。 「、どうしました?」 ドアをどんどんと叩かれる。 ジェイドだ。 不信に思った彼が様子を知ろうと来たのだろう。 だが、『奇跡』や『運命』を信じない男に、こんな不思議なことを、入れ替わりなどを信じてもらえるだろうか。 ・・・・・・十中八九、無理だろう。 冗談、と一蹴された後、何をされるか分かったものじゃない。 それに勝手なことをしないのが得策だし、のためだろう。 「な、何でも無い! あ、いや、ありません!」 「・・・・・・そうですか」 ついうっかり自分の口調で喋ってしまい、急いでの口調である敬語に直す。 頼む、入ろうとしないでくれっ! ジェイドを上手く説得する自信も、上手くかわす自信もない。 「早く出てきてくださいね。逃げられるとは思わないでくださいよ?」 早く軍務に行ってくれればいいのに。 大きな溜息をつく。 まあとりあえず、今の安全は確保できた。 「彼女の方はどうなってるんだろう・・・・・・」 頼りないこの体の、本来の持ち主であるはどうしているだろうか。 ♪ ガイがジェイドに迫られているとき、はひたすら走っていた。 「ガイが女性恐怖症だって忘れてましたよ・・・・・・!」 つまり、彼女は逃げていた。 大量の、メイドから。 「ガイ様がついに女性恐怖症を克服なさったそうよ!」 うっかり、メイドの肩を叩きながら呼びかけてしまい、女性恐怖症を克服したという噂が勝手に広まってしまった。 それを聞いたメイド達が何人も追いかけてくるのだ。 どうやら噂に尾ひれ背びれついて、いつの間にかに、女性恐怖症を克服したから付き合ってくれるだの、一緒に食事してくれるだのということになっていた。 もちろんはそんなことを言った覚えはない。 ついうっかり、がすべてを引き起こしてしまったのだ。 「ガイ様ー!!」 何人ものメイドが追いかけてくる。 中身はなので女性は平気だが、いくらガイでなくともこれは怖い。 もともとガイが無意識のキザ男なので、ただでさえ女性に追いまわされはしているが、この数は異常だった。 いや、だからこそ、この数なのだろう。 なんと厄介な。 「お、ガイラルディア。お前、女性恐怖症を克服したんだってな」 この帝国の最高権力者がタイミング良く、目の前を通りすがった。 どうせ平穏な日々なんてないのだ すいません、続きます。 なぜにガイかと言うと、ジェイドだとうっかり色んな意味で大変なものになってしまうからです(笑) ガイだから常識ある行動に出てくれる(はず)という・・・・・・。 (2006/05/04) |