、少し話が ――― 留守ですか?」



ジェイドはノックも碌にせず ――― つまりは是非を聞かずに、失礼で身勝手にの部屋へ、夜にも関わらず当然かのような様子で入りながら言った。

しかし、当の部屋の主の姿が見当たらない。


(困りましたね。今すぐに聞かなくてはならないんですが)


留守なのかと思い、部屋の中に背を向けて外へ出ようとしたその時、水音がした。


(ああ、バスルームですか。それにしては小さな水音ですね・・・・・・?)


一度浮かんだ疑問を、解決せずに消すことは難しいものである。

素晴らしい大義名分の元に、ジェイドの足は自然とバスルームへ向かうのであった。

その足取りは心なしか軽やかなものであった。

ジェイドはほくそ笑んだ。

脱衣所の扉へ手を掛ける。



?」



あくまで偶然を装うことが重要だ。

あっさりかつさらりと。

しかし、下心はいとも簡単に打ち砕かれた。



「まったく、貴女という人は・・・・・・。風邪引きますよ?というか、襲いますよ?」



は脱衣所の全自動衣類洗濯譜業機に背を預け、足を抱えて座っていた。

無防備にもほどがあるくらいに口からは寝息が聞こえ、身体は規則正しく寝息に合わせて上下している。

は完全に寝ていた。


(仕方のない人ですねぇ、まったく)


バスルームを覗いてみると、バスタブからお湯が溢れていた。

水音の原因である蛇口を捻って閉じ、バスルームの扉を閉じた。

ジェイドは再びのところへ戻ったが、が一向に起きる気配はない。

よほど疲れているようだ。

いつもは、男性社会である軍の中で、それこそ男性に劣らないまでに仕事をこなしている

足を縮めて座っているからか、今、が随分小さく見える気がする。


(いや、はもともと小さいんですよねぇ)


自然と、いつものような薄っぺらではない、心の底から慈しむような笑みをジェイドは零した。

だが、このままをここに寝かしているわけにはいかない。

ジェイドは迷わずを抱え上げ、起こさないようにそっと寝室へ移動した。



「こんなもんですか」



ベットへを寝かせ、掛け布団を肩のところまで掛けてやると呟いた。

気持ちよさそうに寝ているに、少々反則かとは思いつつ、額に啄むようにキスをした。

話はまたの機会にして、そろそろ部屋を出ようと扉へ向かおうとすると、ジェイドは弱い何かが服の裾を引っ張っているのを感じた。



「・・・・・・ジェイ・・・ド・・・・・・?・・・・・・行っちゃ・・・う・・・の・・・・・・?」



寝ぼけ眼で、寝ぼけ声で、が言った。

キスをしたのは失敗だったかと思い、ジェイドは苦笑した。

しかしながら、この小さな指を無理矢理服から引き剥がすなど、ジェイドには到底出来なかった。



「いて差し上げますよ、いつまでも貴女が望むだけ」



笑んで、の頭を撫でると、再び規則正しい寝息が聞こえ始めた。

服から手が指がゆっくり離れていき、腕が掛け布団の上にぽとりと落ちた。

ジェイドは近くにあった椅子を引き寄せ、腰掛けるとの手を握った。


(話すのはやめておきましょうか)


誕生日プレゼントはサプライズが良いだろう。

軽く目を閉じ、もうすぐ来るの誕生日に贈るプレゼントを思案した。







小さな小さな眠り姫、どうかいつまでも私だけのモノでいてください



たまにはほのぼのとしましょう。

(06/07/22)