「失礼します!」
「だから泥棒じゃねぇっつったんだよ!」
「・・・・・・え?」
勢い良くローズ夫人のお宅の扉を開けると、同時に誰かが怒鳴っていた。
そのタイミングのせいか、部屋中の視線という視線が私に集中する。
妙に人口密度が高い気がしなくもない。
怒鳴った人物―――赤髪の少年―――の姿をなんとか認識した途端、何かが私の頭を過ぎった。
だが今は、そんなことを気にしている場合ではなかったと思い出す。
落ち着いて状況を把握しようとすると捜し人の姿が視界に入った。
・・・・・・あれ?
「・・・・・ってイオン様!?」
いなくなったはずのイオン様は目の前にいた。
「おやおや」
私の慌てぶりに、呆れたようにジェイド言う。
うう、恥ずかしい。
「すみません、。勝手に移動してしまって」
「いえ、無事ならいいんです」
ほっと安心する。
もしもローレライ教団の最高指導者が誘拐されては、それこそ戦争が起きかねない。
いくらなんでもそれは冗談じゃない。
私達はオールドラントの平和のために行動しているのに。
「何なんだよ?お前」
「ルーク!」
部屋の中央にいた赤髪の少年がダルそうに言う。
その人物の隣にいた髪の長い少女がそれを咎めた。
「彼の言うとおりだわ。私はそこにいるカーティス大佐の副官、大尉です」
「優秀な右腕ですよ。・・・・・・、彼らはルークさんにティアさん」
ジェイドが少年をルークさん、少女をティアさんと紹介してくれた。
話を聞くと、その後ルークさんは食料泥棒と間違われたらしい。
災難だ。
イオン様がその事件を調べてみたところ、どうやら犯人はローレライ教団の聖獣、チーグルかもしれないとのことだそうだ。
だから私が家に入ったとき、疑いが晴れたルークさんが怒っていたのだろう。
「彼らはローテルロー橋付近ですれ違った馬車に乗っていたらしいですよ」
何気ないジェイドの一言から素早く思案する。
ああ、そうか。
ローテルロー橋はつまり彼らは・・・・・・。
ここはまだ黙っているべきだろう。
ちらりとルークさんとティアさんを見る。
・・・・・・ティアさんはともかく、ルークさんからは欠片も軍人らしい雰囲気はしない。
「さて、あたしは大佐と話がある。チーグルのことは何らかの防衛手段を考えてみるから今日のところはみんな帰っとくれ」
宿屋のご主人達がルークさん達に謝るの見届けた後、ローズ夫人が言った。
村人は承知したらしく、次々に外へ出て行った。
ティアさんがそれに続いて行く。
ルークさんは振り返ってイオン様を見て、不思議そうな顔をしながら出て行った。
「」
「なんでしょう、大佐」
私も外へ出て行こうするとジェイドに呼び止められた。
・・・・・・なんだろうか。
「話が終わるまで一緒にいてくれませんか?」
「別に構いませんが・・・・・・?」
どうせ断る権利など私にはないのだ。
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