「それではイオン様、絶対にこの場を離れないでくださいね」

「ええ、約束します」



イオン様を守るためにも約束を取り付け、私は一人でチーグルの森へと足を踏み入れた。

どうしてこんなことになったのだろうか。

そう考えると自然と溜め息が出た。

きっと全てはジェイド・カーティスのせいだ。





Chapter.1 - Act.3 意識と無意識の狭間






「ローズ夫人、この村のことで何か要請したいことはありすか?」

「そうですねぇ・・・・・・、ここ近年困ったことに収穫量が減ってるんで、宮殿や軍への出荷額を値上げしてほしいですよ」

「分かりました、上層部に進言しておきましょう」

「ありがとうございます、大佐」



この場に残れと言ったくせにジェイドはまだ、私に話しかける気配は欠片すら見当たらない。

ローズ夫人との会話が続く。

たまに話を振られた気がするが、無意識の内に的確な受け答えをしていたようだ、会話は滞り無く進んだ。

とにかく私は眠たかった。

睡眠不足によるものではなく、ただ一定間隔で睡魔がどこからともなくやってくる。

意識は一応あるものの、どこかはっきりしない感じがするのだ。



?」



急に視界と意識がクリアになった。



「え、あ、アニス?」



私の様子がおかしいことに気が付いたのだろう。

不安げにアニスが私を見上げていた。

あれ、いつの間にアニスは来たのだろうか。

どうしたことだ、記憶が無い。



「どうかしましたか?」

「いえ、何でもありません」

「大丈夫ですか?顔色が良くありませんよ」



いつの間にかに会話が終わったのだろう、少し心配そうにジェイドが私の顔を覗きこむ。

何やら頬に手を添えられる。

な、何?

ああ、頬の汗を拭っただけか。

・・・・・・。



「子供じゃないんですから!子供扱いしないで下さい」

「すいません、でもまだどちらかと言うと子供でしょう」

「それはそうかもしれませんが!確かに私の士官学校時代から私をご存知かもしれませんが!」


「ええーっ!大佐とって軍で知り合ったんじゃないんですかー?もっとそのこと知りたーい!」

「僕も知りたいです」

「あれは六年前の・・・・・・」

「止めてください、大佐!アニスもイオン様も!」

「はーい!お邪魔は消えますよぅ。行きましょイオン様」



騒がしく二人が出ていく。

やはり二人はまだ幼いのだと感じる。

・・・・・・いや、五歳くらいしか変わらないのだが。



「それじゃ大佐、あたしはチーグル対策を相談してきます」

「分かりました。それでは、私達もタルタロスに戻りましょうか」

「ええ、行きましょう」










エンゲーブ脇に停めてあるタルタロスに向かって、ジェイドと二人で歩く。

村の中はのんびりとした時間が流れているかのようだ。

所々からブウサギのブヒブヒという鳴き声が聞こえてくる。

先程もそうだったが、ブウサギを見ると皇帝のペット達を思い出す。

可愛い方のジェイドは元気だろうか。





「何?ああ、話しがあるんだったかしらね」

「ええ、イオン様のことです。彼は明日辺りチーグルの森に行かれるつもりです。ですから、多分貴女の所へ降艦口の解錠を依頼しに行かれるでしょう」

「なぜ?むしろジェイドの所へ行くと思うわ」

「いえ、私の所には来ませんよ。あの方は私が反対しそうなことくらい想像がつくでしょうから」

「それもそうね。第一、親書だって明日届くわけだし・・・・・・」



私達がエンゲーブで足止めを食らっているのは親書の到着が遅いのが原因だ。

親書さえ届けば、すぐにでもケセドニアのバチカルへ向かうつもりなのだ。

もちろんそれは早ければ早い方が断然いい。



「それで、私はどうすればいいかしら?」

「ついて行ってください」

「え?止めないの?」

「ええ」



どこか裏のある笑い方をされる。

多少バチカル行きを遅らせてでも、そうするべきだと考えるほどの利益か何かがあるのだろう。

けれどこういう時、大抵私に面倒が回ってくるのだ。



「・・・・・・分かったわよ、大佐サマ」

「ありがとうございます」



ぽんぽんと頭を撫でられる。

ちくしょう。

子供扱いされた気がする。