森の出口まで行くとアニスがいた。



「いやん、ってば大佐とラブラブ?」



開口一番、私を見てその言葉だった。



「いつだってラブラブですよー?」



だからお姫様抱っこは嫌だったのに。

でも、こうなったのも全部自分のせいであって、ジェイドは心配してくれているのであって・・・・・・。

複雑だ。



「ところで、ご苦労様でした、アニス。タルタロスは?」

「ちゃんと森の前に来てますよぅ。大佐が大急ぎでって言うから特急で頑張っちゃいましたv」



ああ、だからそれは本来私の仕事だったのに、などと再び考えて滅入ってしまう。

いけない、しっかりしなくては。



「おい、どういうことだ!?」

「そこの二人を捕らえなさい。正体不明の第七音素を放出していたのは彼らです」

「ジェイド!二人に乱暴なことは・・・・・・」



心配そうにイオン様が頼む。

この物々しい兵士達の様子と、今の会話を聞いていれば不安にだってなるだろう。



「ご安心下さい。何も殺そうという訳ではありませんから。―――二人が暴れなければ」



恨みがましそうにルークに見られるがジェイドは全く気にしていない様子だ。



「いい子ですね。――連行せよ」



ジェイドが低くそう言うと、兵士が2人を捕まえて歩き出す。

2人は明らかに不安そうだった。





Chapter.1 - Act.6 信頼を得る方法





「どうです、。少しは気分は良くなりましたか?」

「ジェイド・・・・・・?ええ、大丈夫よ」



目を覚ますと視界一杯にジェイド、心臓に悪い。

実は結構、日常茶飯事だ。

・・・・・・まあ、最近になって慣れた。

多分。



「病み上がりに申し訳ないのですが、例の2人の振動数解析をお願いできますか?」

「わかったわ・・・・・・わあぁっ、っと!!」



ベットから降りようとすると体が一瞬フラリとなり、バランスを崩す。

またこけそうになる!

けれど、どんなに待っても痛みは無かった。

―――当たり前だ、ジェイドが私の腹部辺りに腕を伸ばして受け止めてくれたのだから。



「あ・・・・・・、ありがとう」

「・・・・・・やはり他の人に頼みますかねぇ」



困ったように微笑まれて、そんなのは嫌だと強く思う。

必要とされないのは、嫌だ。



「嫌!私がやるわ。大丈夫だから、任せて」

「やれやれ、仕方ありませんね。でも」



ふわりと抱き寄せられて、彼に体を預けるような形になる。

私は重くはないだろうか?

私の心臓がどくんと鳴った気がした。



「無理はしないでください。お願いですから」

「大丈夫だから、ね?」



ジェイドは一体何を危惧しているのだろうか。

そんなに心配することでは無いのに。

偶然、調子が悪かっただけなのに。

それでも、心配してくれるのは嬉しかった。










「・・・・・・第七音素の超震動はキムラスカ・ランバルディア王国王都方面から発生。マルクト帝国領土タタル渓谷付近にて収束しました。そうですね、?」



ジェイドが確認するようにこちらを見る。

ジェイドと目が合い、私は頷いた。

手元のボードに挟んだ、測定結果の資料を見ながら答えた。



「ええ。―――簡易的ですが、2人の音素振動周波数を測ってみたところ、ほぼ一致し、2人が超震動の発生源と考えて問題ありません」

「超震動の発生源があなた方なら不正に国境を越え侵入してきたことになります」

「へっ、ねちねちイヤミな奴だな」



ルークが不機嫌そうに言う。

・・・・・・そう思うのも無理無い気がする。



「へへ〜、イヤミだってv大佐v」

「傷つきましたねぇ」



アニスの茶化すような言葉に、ジェイドが一緒になって言う。

嘘つきだ。

ちっとも傷ついているようには見えない。



「ま、それはさておき。ティアが神託の盾騎士団だと言うことは聞きました。ではルーク、貴方のフルネームは?」

「ルーク・フォン・ファブレ。おまえらが誘拐に失敗したルーク様だよ」










―――ルーク・・・・・・、ルーク・フォン・ファブレ・・・・・・。聖なる焔の光―――





・・・・・・え?なに、これ・・・・・・?










妙な耳鳴りのようなものは直ぐに無くなった。

なんだったのだろうか。



「キムラスカ王室と姻戚関係にある、あのファブレ公爵のご子息・・・・・・という訳ですか」



名前を聞いて、ルークさんの態度の大きさに、妙に納得する。

相当甘やかされて育ったのだろう。

隣でアニスが「素敵・・・・・・v」などと呟いている。

・・・・・・失礼だが、どの辺がだろうか。



「何故マルクト帝国へ?それに誘拐などと―――穏やかではありませんね」

「誘拐のことはともかく、今回の件は私の第七音素とルークの第七音素が超震動を引き起こしただけです」

「カーティス大佐、私はティアさんの言う通りだと思います。ファブレ公爵家による我が国への敵対行動では無いと・・・・・・」



ティアさんの言葉に、ルークさんが訳が分からないというような表情をする。



「・・・・・・まあ、そのようですね。温室育ちのようですから世界情勢には疎いようですし」

「けっ、バカにしやがって」



ジェイドがルークさんをからかって、ルークさんがそれに毎度反応する。

どうやらジェイドはそれが楽しいらしく、先ほどからその繰り返しだ。



「ここはむしろ協力をお願いしませんか?」



イオン様の仲介により、ジェイドが私達の現状を2人に説明した。

もちろん、国家機密になることは省きながら。

彼らは私達を信用してはいない。

ただでさえ、ルークさんにとって私達は敵国の人間だ。

そう簡単に信じる事ができるわけ無いだろう。

だからこそ、ジェイドは彼らに艦内の大部分の散策を許可したのだ。

中途半端な信頼は機密漏洩に繋がってしまう。

下手すれば戦争だって起きかねない。

それだけ今の世界は張り詰めている。



「ことは国家機密です。ですからその前に決心を促しているのですよ。どうかよろしくお願いします」



失礼しますとジェイドが部屋を出て行く。

後ろ姿を見送りながら、自分の次の仕事はなんだったかと考える。

ジェイドは多分、艦内の見回りとその他の細かい指示をしに行ったはずだ。



「なぁ、、よくあんなやつの部下やってられるな」

「大佐ですか?・・・・・・まぁ、私も始めは色々とありましたが、慣れましたし」

「うへー。まじかよ」



嫌そうに(いや、ダルそうにか?)ルークさんが言う。

ティアさんがルークさんを咎めたそうに見たが、彼自身は少しもそんなことには気が付いていない。



「長く一緒にいれば慣れますよ、ルークさんだってきっと。・・・・・・あ、ルーク様ですね。すみません」

「あー・・・・・・、別にいいよ、ルークで。敬語もいらねぇや、面倒だし」

「そう?ありがとう」



ルークが少し照れ臭そうに頬を掻いた。

ジェイドにはない可愛げである。

30代後半の軍人男性に可愛げが必要かどうかは別にしてだが。



「それじゃあ、私は仕事に戻るわ。アニス、2人をお願いね」

「はーいvアニスちゃん頑張っちゃう!」



横にいたアニスに頼むと、可愛らしく手を上げる。

やはり、これもジェイドには無い可愛げだった。