それはジェイドのかわりにブリッジで細かい指示をしていた時だった。





Chapter.1 - Act.7 言葉とは裏腹な想い





「・・・・・・何か来る・・・・・・?」



妙な寒気を感じた。

魔物が発する殺気に似ている。

・・・・・・間違いではないだろう。

全身で、どこかにいるはずの気配を探る。

数は?場所は?



「どうしました?大尉」

「・・・・・・かなり多いわ。―――誰か、上空を良く調べて!何かがいるはずよ、それも集団で!」

「はっ!!」



嫌な予感がする。

上空で何かの集団が蠢いている気配がするのだ。

そしてそれらは、どんどんこちらへ近付いているようにしか思えない。

ジェイドに連絡する?

そろそろルークとの今後についての会話も終わっただろう。



「大尉!前方25キロ地点上空に、何かの大集団を発見しました!」

「対象の識別を早く!」

「・・・・・・グリフィンです!何かを乗せています!」

「・・・・・・貸しなさいっ!」



大型スコープを代わってもらい、急いで対象を観察する。

数え切れないほどのグリフィンがこちらへ向かってくる。

そして彼らは何かを乗せていた。

・・・・・・これは、ライガ?

チーグルの森で大発生していたライガだ。

それにライガとグリフィンが一緒にいるなどありえない。

・・・・・・何者かが操っているのでは?

そして魔物を操れる少女が六神将にいたはず―――そう、妖獣のアリエッタだ。

そう考えると、これはかなり危険かもしれない。



「船長!カーティス大佐に連絡、いえ、警報を鳴らすのを優先してください!」

「了解しました!」

「艦は一時停止!迎撃の準備を行って!砲撃許可は後から後から得ます!!」



とたんにブリッジが騒がしくなる。

数が数だ。

一体二体の数ではなく、大集団。

すぐに警報が鳴り響いた。



『船橋!どうした?』



警報から数秒遅れてジェイドから通信が入る。



「前方20キロ地点上空にグリフィンの大集団です!総数は不明!約十分後に接触します!師団長、主砲一斉砲撃の許可を願います」

『艦長は君だ。艦のことは一任する』

「了解!前方20キロに魔物の大群を確認。総員第一戦闘配備につけ!繰り返す!総員第一戦闘配備につけ!」



周りが本格的に砲撃準備を開始する。

私も配備につかなくてはならない。

けれどもその前にジェイドに連絡しておきたかった。



「ジェイド、聞こえる?」

『聞こえますよ、

「私は第一線で指揮をとるわ。貴方はイオン様とルークをお願い!」



彼らがいなくては平和は望めない。



『体の調子は?まだ本調子ではないでしょう!?』

「平気よ、じゃあね!」

『ちょっと、待ち』



無理矢理、船長と通信を代わる。

会話を強制終了させてしまったので、きっとジェイドを怒らせただろう。

でもぐずぐずしている暇はない。

ジェイドには彼らを守ってほしい、ただそれだけ伝えれば十分だ。

体は・・・・・・少し頭が痛いがまったく平気だ。



「大尉!グリフィンとライガが降下体制に入りました!」

「わかりました、甲板に出ます!!」



腰に黒いナイフが二本とも存在することを確認する。

この二本と共に、四年間、最前線の戦場を駆け抜けた。

早く功績を上げて、ジェイドの隣に並ぶために。

多くの人間、魔物を殺して、その骸を積み上げた。

相手一人一人、一体一体に罪も恨みもない。

けれども、私は軍人で相手は私を殺す気で向かってくる。

だから、私も殺す。

到底許されることではないけれど、私はそうやって生きてきた。

だからこれからもそうやって生きていくつもりでいる。

ジェイドの隣にいるには、そうやって生きていくしかない。



「みんなを守ってね、ジェイド」



私は守ってもらうような女ではないのだから、みんなを。