「伝書鳩を借りてくるわ」

「あ、ティア!私も行くわ」

「・・・・・・ごめんなさい、一人で行かせて?少し、一人になりたいの」



そう言って、一人で行ってしまうティアの背中が少し哀しかった。





Chapter.1 - Act.17 揺らめく煙





ティアはあまり自分のことを話さない。

グランツというファミリーネームに気が付かなかった私も私なのだが、彼女とヴァンが兄妹であるということは、ルークから聞くまで知らなかった。

その様子をジェイドに見られ、気が付かなかったのですかと嫌味を言われたのはついさっきだ。



「ヴァン師匠が悪いわけねぇじゃん。な?

「そうねぇ・・・・・・」



ルークが隣で言った。

ジェイドが目の前の宿屋で手続きをしているのだが、どうやら待っているのに飽きたらしい。

同意を求めるような言葉に対し、曖昧な笑みで誤魔化しながら、先程のヴァンとの話を思い出した。

ヴァンはティアがヴァンのことを誤解していると言った。

ヴァンとは会ったばかりなので、そのことについては信用できないのでなんとも言えない。

しかし、話を聞いているとティアも大詠師派なのではないかと思ってしまう。

ティア自身、大詠師の部下であることを認めているし、六神将が大詠師派であることも分かっている。

和平の邪魔をしてくるのは六神将だ。

ならばその六神将に命令を出しているのは大詠師であり、彼は戦争を望んでいるのではないだろうか。

けれどもティアは大詠師は戦争は望んではいないと言う。

ただ単に末端の兵であるティアにまで情報が届いていないのか、あるいはどれか情報が間違っているか・・・・・・。

そこまで考えて思考を遮断した。

どちらにしろ、情報が少なすぎる。

あまりに早い決断はミスにつながり、大きな痛手となって返ってくるだろう。



「どー考えてもティアの方が怪しいじゃねぇかよ」

「ルーク様、アニスは導師派ですからねv」

「そりゃ、アニスは導師守護役だからなー」

「ガイは黙ってて!」

「アニス、ルークに聞こえちゃいますよ?」

「きゃわーん」



どうやら、みんな暇だったらしい。

ルーク、アニス、ガイ、イオン様は楽しそうに話し始めた。



「まったく、みなさん若いですねぇ」

「なに、そのおじさんみたいな発言は」

「いやー、私もそんなに若くはないですよ?」

「・・・・・・『も』ってなによ?」



はっはっはっ、といつものようにジェイドが誤魔化した。

どうやら手続きが終わったらしい。

みんなを見ながら眩しそうに、一瞬目を細めた。

しかし、それはほんの一瞬でしかなく、すぐにそれは消えうせ、いつもの胡散臭い笑みを浮かべた。



「ティアはどうしました?」

「報告の為に伝書鳩を借りに行ったわ。大変ね」

「おやおや。人事ではありませんよ?私達も鳩を借りなくては」

「ええ、陛下への途中経過報告でしょう?ジェイドが戻ってきた事だし、ティアのお迎えがてらに行ってくるわ」

「気をつけて下さいね」

「流石にね」



肩を竦めて言いながら、歩き出した。




















「おっ、見えてきた見えてきた」

「思ったよりも時間がかかったわね」



ガイの声に、確認するように前方見やると確かにそれらしい門が見えた。

カイツール軍港だ。

キムラスカ領に入ってから、既に二晩を過ぎていた。

前に戦争で来た時はタルタロスだったので、半日以下の距離だった。

しかしながら、徒歩とは言えど、これは少し時間がかかり過ぎではないだろうか。

それはみんなが理解しているようで、訓練経験のない二人―――ルークとイオン様は疲弊しているようだった。



「ここもなんつーか、殺風景な・・・・・・っと、何の騒ぎだ?」

「・・・・・・煙?」



ルークとティアの言う通り、軍港はなにか異常な雰囲気に包まれていた。

ところどころから、人々の叫び声が聞こえてくる。

そして軍港の奥、ちょうど桟橋の方から煙が上がっていた。



「まさか・・・・・・!」

「ちょ、っ?!」

「・・・・・・まったくっ!」



アニスの驚いたような声と、ジェイドがイラついた声が聞こえたが、私は止まる気にはならなかった。

私は焦っていた。

とにかく力の限り、全力で走った。

おそらく、軍港は火事となっている。

煙の位置からして燃えているのは船だろう。

下手をしたら爆発が起きかねない。

それに、もしもそうしたのが六神将だったら?

人が、殺されているかもしれない。

まるで、タルタロスの時のように――――――。